第1回 はじめに
クリーニング業界は今まさに試練の時と言えるでしょう。昨年度の年間総需要は5,800億円とも言われていますが、この数字の意味するものは非常に大きいといえます。といいますのも、今後この数字が上昇するとは考えにくいからです。クリーニング業を取り巻く状況も、大きく変化してきました。これまでは業者間による競争であったものが、一般家庭との競争に変化してきたという事実です。
例えば具体例を挙げますと、大手家電メーカーの家庭用洗濯機の需要が前年対比で約20%も増加しているということがあります。従来のような4Kg洗いの洗濯機ではなく、7kg以上の大型の洗濯機の買い換え需要が非常に多いということです。今後このような傾向は、ますます増加することが予測できます。
また、花王が発表したところによると、家庭用洗剤の売上が前年対比約30%も伸びています。この傾向もまた、前年対比は別としても、売上そのものが減少するとは考えにくい状況にあります。
さらに追い打ちをかけるかのように、アパレルメーカーの新製品の約4割に当たる製品が、家庭洗濯ができることを前提に開発、販売しているという事実です。百貨店での店頭においても、販売員はことさらにこのことを強調して販売を展開しています。
これらの事実からもご推察いただけると思いますが、今後、クリーニング業者が生き残るためには、従来からある固定概念を払拭し、新しい考え方、新しい生産性といったものを考え出していかなければなりません。これらは非常に勇気がいることであり、決断に大いに戸惑うことでもあります。
しかしながら、これまで大手業者はその規模の大きさから、小回りの利かない経営体質でしたが、それを改め、新たな経営指針を打ち出してきています。当然この波はすぐにやってきます。世の中の動きにどう対処していくか決断しなければなりません。
【著者】土肥 照広
1997年に大阪で開かれたクリーニング・パワーセミナーからの要約をお届けします。テーマは「経営分析」と「顧客管理」でした。
※クリーニングオンラインで1997年に連載した全文を掲載しています。