第3回 クリーニングって、なに?
「サンタ、どうだい?仕事の方は」
喫茶店「えんじぇる」で開口一番、シンイチがのぞき込むように聞いてきた。隣りのマリコも興味津々の顔(そんなにクリーニング店が珍しい?)。
「ああ、心配無用だよ。新車に乗って優雅に営業(集配だが)の毎日さ」
「でも、サラリーマンと違ってマイペースだから、楽かも知れないけど怠けそうにならないの?」
さすが、マリコの突っ込みは鋭い。実際、通勤時間はないしタイムカードもない。が、勤務時間は決まっていないし、同僚もいないから、つい本屋さんに寄ったり喫茶店へ入ったり・・・自分で自分を管理するのがこんなに大変とは思わなかった。そういえば、たまに父が昼寝をしたり、母がワイドショーを見ていることもあったな。父は毎日コツコツとよくやっているよなぁ。母も家事と兼務だから、疲れるだろうね。
「うん、マリコの言う通りだよ。自分が上司であり部下なんだから、自分との戦いさ。誰にも文句を言えない感じかな」
「そう、自営業の人って比較する相手がいないから、自分しか見えなくなっちゃうのね」
本当に鋭いね、キミは。
「でもさ、家業のことをこれほど見つめたことなんて、正直なところ、いままでなかったよ。ところでマリコ、キミもクリーニング店を利用しているけど、クリーニングって何をしてると思う?」
さあ、反撃だ。
「う~ん、いきなり聞かれても・・・そうね、ウチで洗えないモノや汚れが落ちないモノはクリーニングに出してるかな」
「シンイチは?」
「えっ、オレか?オレのものは親(母)がまとめて出すから、考えたこともないよ。まあ、スーツなんか、ピシッ!と仕上がって戻って来れば文句ないね」
「サンタ、クリーニングってお店によって何か違うの?私なんか、つい安い店を利用しちゃうけど・・・今度はサンタのお店に出してみようかな?」
一瞬、ドキッとした。他の店はどんなクリーニングをしているのか、ボクは知らない。親友の大切な衣服を預かって、仕上がりに満足してもらえるだろうか?
「おや、三人で随分マジな話をしてるね。せっかくのコーヒーがさめるよ!」
マスターの戸中井(トナカイ)さんが割って入る。ついでに、「マスターにとってクリーニングとは?」と聞いたら、「それはヒミツです・・」と言いながら逃げて行った。やはり、知らないよね。
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