第6回 お客様は皆、神様です
季節はもう、3月。繁忙期を目前にして、ボクの「しろねこ」店づくりは着々と進んでいる。
父に聞いたところ、例年この時期にはドライ品20%割引のセールをやって、繁忙期への流れを作るという。
しかし、カナエ姉さんに言わせるとあまり「起爆剤」にはなっていないそうだ。原因はセールの告知方法、つまり父が太いマジックインキで書きなぐるPOPポスターが見苦しいらしい。
来店するお客様はほとんど理解していないので、カナエ姉さんはセールストークでフォローしているとのこと。それじゃ、他の店舗では・・・考えるのも恐ろしい。
それで、カナエ姉さん・・いや、専務の業務命令がボクに下った。「サンタは学生の時、学園祭で立て看板を書いていたでしょ?何かセールをハッキリ知らせるモノを作ってよ」というわけで、いま日曜大工センターでベニヤ板・角材・ペンキ・刷毛を買ってきたんだ。
お店に戻ると、店先に主婦らしき若い女性が立っていた。ボクが「あ、いらっしゃいませ!」と言うと、あきらめ顔でクリーニング品を入れた紙袋を抱えて帰ってしまった。あれ?母に店番を頼んだのに、いないのかな・・とドアを開けたら、近所のおばさんと母がいた。おばさんが帰った後で、母と口論になった。
サンタ「ちょっと前まで、店先にお客様がいたよ。順番を待っていたんだ、きっと」
母「あら、そう。気がつかなかったね・・入ってくればいいのにね」
サンタ「あんなにムダ話で弾んでいたら、誰だって声をかけにくいでしょ!」
母「ムダ話じゃないよ、いつも4,000~5,000円も利用してくれる大事なお得意様なんだよ!」
これだから新規のお客様が増えないんじゃない?
ボクはムカついたので、「えんじぇる」でコーヒーブレイクと決め込んだ。ちょうどマリコが来ていたので、つい愚痴をこぼす相手をさせてしまった。
マリコは、「それは『お母様の』大切なお客様だったのよ。サンタも感情的に言いすぎたんじゃない?でもね、お客様は『人』じゃなくて『店』につかなくちゃダメだと思うの。だって、お母様がいなくなったら(ゴメン)サンタの世代は困るものね」
そう言えば以前、会社の研修会で講師が言ってたっけ。お店はお客様を迎え入れて、姿が見えなくなるまで送り出すのが接客だって。ウチでも研修会が必要だな、こりゃ・・・。
サンタの挑戦・1〜100回まで掲載したDiGiBOOKも発売中