第10回 お客様を守って増やす
専務(カナエ姉さん)の突っ込み、社長(父)の沈黙で、第1回の営業会議から気まずい雰囲気になってしまった(先に食事を済ませておいて本当によかった)。すると、傍らで聞いていた母が見兼ねて「ねえ、サンタ。もう少しお父さ・・・いえ、社長にわかりやすく言ってくれないかい?」と口をはさんだ。
ボクもサラリーマン時代に経験したけど、会議に熱中すると本題が何だかわからなくなるんだよね。母のように少し離れて(客観的に)聞いている人がいると、本当に助かる。
サンタ「あ、ごめん!あのね、社長。なにも仕事の質を落すとか、安い仕事をするって意味じゃないんだ。友達が言ってたけど、値引き競争をしてもお互いの首を締め合うだけで結局お客様は長い目でみて利用しやすい店に固定化するんだって」
専務「それじゃサンタ、値引きも値下げもしないで待っていれば、相手は自滅するわけ?」
サンタ「いや・・料金に大差がつけば、多少利用しにくくても、多くのお客様が低料金の店へ流れるだろうね。だけどウチの本店だったら、技術や応対は取次店に負けないでしょ?これに長く利用すると得したキモチになる販促を加えればいいんだよ」
専務「具体的には?」
サンタ「ずーっと利用してくれるお客様には利益を還元する、つまり割安にするのが原則さ。そして初めての来客には再び利用してもらう割引をする、つまりリピーターになってもらうわけ。当然、新しいお客様にお店を知ってもらうために、年2回はチラシを折り込む。リピーターは逃さないように、ダイレクトメールでセールを知らせたり割引券をつけたりするんだ」
ここまで黙って聞いていた社長が口を開いた。「わかったが、サンタ。それをやると、しばらく売上が下がるかもしれないし、販促にお金もかかるだろう。それなりの勝算があるんだろうな?」
サンタ「うん・・・たぶんね」
社長「『たぶん』じゃダメだろ!その販促で売上が10%増えたら、おまえを『営業部長』にしてやろう。もし増えなかったら、年末のボーナスはカットだ!」
サンタ「いいよ。営業部長になったら給料上がるしね」と、売り言葉に買い言葉で約束してしまったが、確固たる勝算などあるわけがない(初めてやるんだからね)。閑散期でひと息つけると思ったら、また自分で忙しくしてしまった。
*** 親父のホンネ ***
オレだって何十年も借金したり、冷汗かいたりしながら店を続けてきたんだ。金を使うということ、自分で責任を持つこと、これができなきゃ跡縦ぎは任せられないぞ。まぁ、この販促で使う金はサンタの勉強代だと思っているがね。
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