最強のユニット論
第15回 点検制度(チェック・システム)

いつ出しても、同じような品質、仕上りでクリーニングしてくれる。安心してまかせられる。それがお客とお店の信頼関係の基本であり、経営の第一歩ではないだろうか。
本来ならば、手掛けた品物の一点一点に品質合格証や品質保証シールくらい添付したいところだ。

常に決められた品質を維持していくためには、それなりの点検という関門が必要である。貴社では、いつ、どこで、だれが、どんな方法で点検を実行しているのだろうか。そして、その責任者はだれなのか。
30キロクラスのドライ機をメインに仕事をしている、少し大型のユニットショップで、実際に行われている点検制度(チェック・システム)をみてみよう。

  1. カウンターで衣類を受け付けるとき
  2. マーキング・テーブルで衣類にタグを取り付けるとき
  3. 洗い場で、洗浄準備(仕分など)をするとき
  4. 乾燥が終わり、仕上場に送り出すとき
  5. 仕上が終わり、整理部門に送り出すとき
  6. 組合せが終わり、包装をするとき
  7. お客様に衣類をお渡しする前

これが普通に行われているチェックで、もちろん各々の箇所でのチェックの目的や方法は別に定められている。

工場内におけるクリーニングの仕事は、いくつかの分業の組合せであり、品物は決められた順に従って、次々と送られてくる。このとき、ひとつの作業が終わるたびに、その作業が確実に、かつ完璧に行われたかどうかチェックし、100%オーケーであれば次の工程に送り込む。
すなわち各々の分担の仕事が責任をもって遂行され、完璧なものでなければ、次の工程には送り出さないというのが原則である。仕事の節目節目にチェックの眼を光らせて仕事の成果を確認し、最終的に不良品を絶対に出荷しないことが点検制度(チェック・システム)の目的である。
点検の最終責任者は社長(経営者)であるが、現場での実務はほとんど指名された社長の代理人が行う。従って点検は常に、冷静かつ公正に実行しなければならない。

点検が大切なことはわかるが、それにしても品物一点に7回も点検するというのは、ちょっと過剰では…かなり点検を気にしている人でも、そう思うだろう。しかし点検という作業を軽視することが、クリーニング事故の元凶であることを決して忘れてはならない。特にユニットショップ内での作業工程では、点検作業が意外と軽視されがちであることを特記しておきたい。

では7回の点検作業の内容を詳しく見ていきたい。

(1)カウンター受付

クリーニング作業の原点ともいえる大切な仕事のひとつで、今さら説明するまでもなく、誰もが熟知しているはずである。
通常の時間帯では、カウンターでお客様からお預かりした品物は決められた手順に従って、要領よく、素早く点検をして、伝票を作成し、預かり証を発行する。ここで、すぐにマーキングタグをそれぞれの品物に付けて、洗いのための準備をするか、あるいは取りあえず品物と伝票を一客分づつまとめて仕切りをつけながらワゴンに入れていくか、もしくはネット等に入れてマーキング作業のためにまとめておき、後で一袋づつ開けてタグを付けるかということになる。
後者のやり方は欧米に多く見られ、いわばマーキング・テーブル方式ともいえるもので、店頭に受付用のカウンターとは別に点検用の作業台(マーキング・テーブル)を設置し、入念に点検しながらタグの取付を行う。従ってカウンターの上は、いつでもお客様の受付ができるよう、広く開けておけるというメリットも生まれてくる。

混雑時は、まずお客様を待たせない配慮が重要。点検は要領よく、迅速に、しかも要点だけは確実に行うこと。この場合、後の入念点検の時に発見した異常については、まずお客様に連絡し、了解をとることと伝票へ記入することを忘れないように。

カウンターでの点検はお客様の目の前で行うわけであるから、くれぐれも、あら探しや品定め的な態度があってはならない。これは受付担当者としての腕の見せ所であり、日頃の訓練と経験がものをいう場である。手際よく、素早い対応が肝心で、もたついてお客様を待たせ、イライラさせてはならない。

(2)マーキング・テーブル

多少の時間をかけても入念に、本格的な点検を行うのがマーキング・テーブル上での点検である。ここでは伝票と照合しながら、点数、破損状態、シミ、ボタンの点検と処置などを決まりに従って点検し、必要事項の記録、特殊タグの添付、また時には必要なお客様との連絡等を行い、品物を次の工程(洗浄)へ送ることになる。

ここまでが受付時の点検であり、この後の点検は各々の工程で行った作業の点検が主題となる。

(3)洗浄部門~洗い前

受付けから送り込まれてきた品物には、それぞれ「特急品」「シミあり」「破損あり」等々いろいろな申し送り事項があるので、まずはその点検をし、一部のシミについては前処理をし、洗濯機の容量に応じたロットをつくって洗浄作業をはじめる。

(4)洗浄部門~乾燥後

乾燥が終わった品物は素早くハンガーに吊るすか、移動用カートにかけて、きれいに洗われているか、シミは処理されているか、洗浄中に破損などはなかったか一点一点要領よく点検する。異常を発見した場合は、まとめて洗浄部門に返送し、担当者に連絡する。
点検が終わったら、品種ごとにそれぞれの仕上工程へ送り出す。

(5)整理部門

仕上げが終わった品物は、一応ハンガーに吊るされた状態で整理部門に送られる。このときスクリューコンベアを使用すれば、自動的に搬送することができる。なおこの場合の移動は、仕上工程中に帯びた湿気を飛ばすという働きもすることになる。
整理部門では、決められた基準通りに完璧な仕上になっているかどうかをチェックする。これは重要なチェックポイントなので、公正かつ冷静な目で判断しなければならない。できるだけ新品に近いシルエット、風合いが再現されているか。そのためにも、新品の背広やワンピース等がどのような状態であるかを常日頃からよく観察し、自分自身の衣服やファッションに対するセンスを磨いておきたいものである。
点検して不十分な点については仕上部門にバックして修正を要請する。合格した品物は順次、整理組み合わせを行い、包装部門へ送り出す。

(6)包装部門

包装してしまうと、その後は細部を見ることが難しくなるため、伝票、タグと照合しながら点数、特に付属品を確認の上、定められた包装をして、指定のストックスペースに収納する。

(7)お渡し

お客様にできあがった品物をお渡しするときは、必ず預かり伝票を確認する。もし伝票がない場合は、本人であることを確認し、念のために受け取りのサインをいただくこと。

さてこれで7回の点検が終わったわけであるが、これが最上のものかはどうか別にして、実際に行われている点検制度(チェック・システム)の一例である。この点検制度下での事故の発生は約10カ月間、皆無であったことを報告しておきたい。

ブルースパイス