第11回 スチームトラップのあれこれ
蒸気の熱を使用する装備には必ずスチームトラップが取り付けられています。
スチームトラップはご存知ですね、もちろん!本当ですか?
蒸気の熱(潜熱)を利用した後、蒸気はその熱を放出してドレンになります。
スチームトラップは蒸気を漏らさず、ドレンだけを排出する部品です!
簡単そうなこのスチームトラップですが、色々な方式のものがあり、その特徴を理解して使用しないと大変!
理屈はともかく、勘所をこのページでゲット、Let's Power up !
■種類と特徴
デスク型(安価でスチームトラップの代名詞)
- 強み:構造簡単、小型軽量、加熱蒸気OK、ウオータハンマーに耐える
- 弱み:動作不安定、蒸気ロス多い、エアーロッキング障害あり、寿命短命
一昔前は安価のためか、あっちこっちに使用されていました。カチーン~カラカラ~カチーンでお馴染み。
弱みが時流に合わず、メカトラ全盛の今日あまり見なくなりました。
オリフィス型
- 強み:小型軽量、空気障害なし、加熱蒸気OK
- 弱み:蒸気ロス多い、調整が必要(6カ月~10カ月)、高頻度作動で短寿命
一時期多く使用されたが、調整が必要という事と短命で最近は特定個所にしか使われない。
逆バケット型(メカトラの代表選手)
- 強み:排気良好、蒸気ロス少ない、放熱ロス少ない、敏感に作動、無調整、長寿命
- 弱み:弁機構が複雑故障に注意、比較的高価、重量重い、水平取り付け要あり
オールマイティーに使用され、安定した性能が長時間維持出来ます。
使用に注意が必要です。最高使用圧力以上で使用すると閉弁したままとなります。しかし、最高使用圧力に近い所で使用するのが最も効率良い使い方になります。
大量の初期エアーベントが必要な場合、エアーベント穴の大きいオプション品を採用。
フリーフロート型(オーソドックスなものです)
- 強み:蒸気ロス少ない、連続排出、敏感に作動、無調整、小型軽量
- 弱み:エアーベントに工夫必要、フロート芯球度が性能、水平取り付け要あり
何といっても連続排出が特徴で、オールマイティーに使用が可能です。
最高使用圧力以上で使用すると閉弁したままとなるのは逆バケットと同様。
エアーベントの工夫がシンプルで安定性の高いものが必要(エアーベントが洩れると最悪)。オリフス径で使用圧力と能力が決まります。
ベローズ型(サーモスタチックタイプです)
- 強み:ドレン温度で開閉、排気良好、静粛作動、小型大容量
- 弱み:使用圧力が小さい、ベローズ故障に注意、容量安全率が5倍程度必要
最近はベローズに工夫されたものが多く故障率も低下しています。
容量安全率に注意し、16kgゲージ圧力以下で使用した場合、小型で安価に対応出来ます。
しかし、ドレン温度が比較的低くなり、ドレン回収時問題が出る場合があります。 蒸気圧力とドレン量がコンスタントな場合はドレン温度も高く工夫出来ます。
■ヒント
ドレン排出
ドレンを排出するには、蒸気圧力を使います。熱量で考えれば蒸気圧力は低くても良い場合もありますが、ドレンを速やかに押し出し、所定の場所まで運ぶためには理屈抜きで蒸気圧力が必要です。
トラップのポイントで考えれば、トラップ入口圧力と出口圧力の差圧でドレンを押し出し、トラップから押し出したドレンを、例えば30m先まで運ぶためには、高い圧力の方が速やかに運べます。
トラップは配管径で選ぶのではなく、排出能力で選ぶ
トラップは当然排出能力で選定します。ドレンの最大排出時の量を想定します(通常装置の立ち上がり時)。
次に、トラップの入口圧力と出口圧力を想定し(差圧の想定)能力表から選定します。
ここで大事なのは安全率です(少ないタイプでも1.5倍~2.5倍、多いものでは5倍必要なものもあり)。
充分な安全率確保は、安定動作と寿命延命に貢献します。
■まとめ
ウオーターハンマー他、蒸気とドレンは不可解な事を色々起こします。
基本に忠実に、かつトラップの特徴を理解し選定すると、意外と簡単な一面もあります。
最後にトラップには寿命がある事を充分認識して下さい。
正常に作動していると思って5年も使ったトラップを交換したら、どんなトラップに換えても見違えるようになります。はい!!